たばこ  (By.刹那)


時々、紅く染まった空を見上げる。誰もいない部屋で煙草に火をつける。

窓辺に流れる雲のような煙は、紅い光に照らされて消えてゆく。

何処に消えてゆくのか、誰も考えることもないままに、煙は空へ流れる。

火が徐々に浸食し、やがてはその役目を終える。

煙草は、その人の想いを抱きながら灰に変わる。

それは、その人の想いが灰に変わってしまわないように、

けれど、いつかは共に、灰に変わってしまうように。

あの時の煙が、今はあなたを包んでいるだろうか。

まるで、共に灰になることを望むかのように。


遠い異国のようなあなたの場所まで、辿り着けただろうか。

あなたが他の誰かの煙に、優しく包まれているとしても。

あなたは感じることができただろうか、この僕だということを。

滅ぶのなら、共にという身勝手な僕だけど、それでもまた、煙草に火をつける。

あなたを守ると約束した時から、先に僕が滅ぶことを決めていたから。

どうか、この体が灰に変わるまでに、あの笑顔をもう一度。